なじみの深い調味料「サラダ油」。料理をしているときに「サラダ油って何だろう?」とふとした疑問を抱いたことはありませんか?
サラダ油とは?をひと言でまとめると、
「高度精製油」を指す日本独自の名称
です。
具体的には、
◎指定された原料
◎加工処理
◎JAS規格の認定
などの過程を経て、初めて「サラダ油」を明記できるようになります。
この記事では、サラダ油について、
◯詳しい定義や製造方法
◯サラダ油の「サラダ」の由来
◯同じような使い方をする油との比較
などを分かりやすく説明していきます。
これを読めば「いつも使っているサラダ油とはどんな油なの?」という疑問や「サラダ油は他の油とどう違うの?」という悩みが解決でき、自分にとってベストな油を比較検討できるようになるはずです。
毎日の食卓を彩る「サラダ油とは」何者なのか?ぜひ、最後まで読んで「なるほど!」と納得してみてください。
目次
1 サラダ油とは日本独自の高度精製油
サラダ油とは、「高度精製油」を指すJAS規格で定められた日本独自の名称です。1924年に日清オイリオから初めて「サラダ油」という名前の油が発売してから広く使われるようになったため、JAS規格でそのまま等級を示す名称として用いることになり、正確な品質管理基準などを設けました。
低温でも濁ったり固まったりしないサラサラとした質感なので、揚げ物や焼き物だけでなくドレッシング作りやお菓子作りなど幅広い料理に活用できます。
また、他の油よりも高度な精製加工を施しているため、透き通った色で味わいに癖がないところも特徴です。素材の味や見た目、他の調味料の味を邪魔することなく扱いやすいため家庭料理に取り入れやすくなっています。
1-1.サラダ油の原料
サラダ油は植物油に分類されており、使用できる植物の種類はJAS規格にて定められています。(概ね5年ごとに見直しが行われており平成26年度改定時の内容です)
9種類の植物をそれぞれ単体で使いサラダ油にする場合と、2つ以上の原料を混ぜ合わせてサラダ油にする場合があります。単体で使用している場合は「サンフラワーサラダ油」「とうもろこしサラダ油」など名称に明記があるため、原料把握がしやすいです。
一方で、2つ以上の原料を混ぜ合わせている場合は「調合サラダ油」と呼ばれ、使用した植物を「原材料名」に記載しています。
1-2.サラダ油の製造方法
サラダ油は高度精製油と呼ばれるだけあり搾取した植物油をそのままボトルに詰めるのではなく、いくつかの加工処理を行っています。
基本的に下記の図のような5つのステップに分けて精製していくところが特徴。ここでは、1つ1つのステップの詳細をご紹介します。
STEP1.原材料から油を搾取する
原材料となる植物の種や実に力を加え圧搾します。絞った油に溶剤を加えて、さらに油分を抽出。最後に、蒸留処理をすることで不要な溶剤を取り除きます。大豆や米ぬかなど圧搾に耐えられない原材料の場合は、溶剤のみで油分を抽出します。
STEP2.不純物を取り除く
原油には不純物が多く含まれているため遠心分離機と使い、遊離脂肪酸やガム質(リン脂質)を取り除きます。
STEP3.クリアな色に精製する
透明度の高いサラダ油に仕上げるため、天然の白土を加工した活性白土を使い余分な色素を吸着して脱色します。脱色後にろ過をすることで白土を取り除くことが可能です。
STEP4.脱ロウをする
使用している原材料によっては、冷えたときに固形化しやすいロウが多く含まれている場合があります。脱ロウ処理をしてあらかじめロウを取り除くことで、冷えたときでもサラサラな液状に保てます。
STEP5.脱臭をする
高温真空状態で水蒸気蒸留をすることで、油特有の臭いを飛ばして幅広い料理に使いやすくします。
このような過程を経て、不純物や油特有の臭い、色まで取り除きサラダ油が完成します。
1-3.「サラダ油」と名乗るにはJAS規定が必要
JAS規格(Japan Agricultural Standard)とは「日本農林規格」とも呼ばれている国が制定する規格です。食品や農林水産品をより安全に味わえるよう一定の基準を定め審査を行っており、クリアしている場合のみJAS認定となります。
サラダ油は「JAS法の品質規格で定められた高度精製油」を指すため、JAS規格の基準をクリアしていないといくら他のサラダ油と同等の商品であっても「サラダ油」とは名乗れません。では、JAS規格ではどのような基準を設けているのか簡単にご紹介します。
1-3-1.認定工場で生産されている
国の審査にクリアした認定工場で生産されていることが前提です。サラダ油の場合は第三者機関である公益財団法人日本油脂検査協会の検査を受けて、サラダ油を生産できる状態が整っているとみなされる必要があります。
そのためには、品質管理や設備管理ができる状態であること、食品衛生責任者の配置されていることなど、細かな規定があり、この条件を満たさなければなりません。
また、一度条件がクリアできても定期的に厳しいチェックが行われるため、整備された環境を維持する必要があります。
1-3-2.食用植物油脂の表示事項が守られている
サラダ油には「食用植物油脂の表示事項」を記載することが法律で義務づけられています。JAS規格をクリアするには消費者が理解しやすいように、下記のようなラベル式でサラダ油の原材料名や保存方法、賞味期限などを表記しなければなりません。
表示事項 | 表示内容 |
名称 | 例:食用ひまわりサラダ油 |
原材料名 | 例:食用ひまわり油(2種類以上調合している場合は、割合が多い油から順に表記する) |
内容量 | 例:500g (油は温度により比重が変換するため、重量で表示) |
賞味期限 | 例:2020年1月(品質保持ができなくなる時期を表記) |
保存方法 | 例:直射日光を避ける(品質を保つ方法を表記) |
製造社名 | 社名・住所・問い合わせ先など |
1-3-3.品質のチェック
品質に関しては、視覚や嗅覚、味覚など人の五感により細かくチェックされます。それだけでなく、精製度や酸化状態、不純物の比率などを科学的な視点からもチェックし、食用のサラダ油として適しているのかさまざまな視点から考察しているところもポイントです。
油種ごとの特性値を規定として設けており品質を計る基準としています。
1-3-4.食品添加物など安全性のチェック
JAS規格のサラダ油では天然型のビタミンE(抗酸化作用を持つビタミンE)を除いて、食品添加物を使用できません。保存料や消泡剤などの使用が認められていないので、安全性は高いと言えるでしょう。
また、原材料の安全性についてもチェックを行っており、輸入された原料を使うときには政府によって残留農薬などの検査を実施します。許容基準を満たすものだけが許可されるため、一定基準を満たした原材料だけを使用しています。
JAS規定の認証機関では上記のようなポイントを細かくチェックして、サラダ油と認定できるかどうか見極めています。サラダ油は日本で広く使われている代表的な油ではありますが、実は厳格な基準と品質管理をクリアした油にしか与えられない名称なのです。
サラダ油は危険?
サラダ油は高度精製過程で、健康を害する恐れのあるトランス脂肪酸などが発生するとも言われています。サラダ油の危険性が気になる人は、併せて下記の記事もチェックしてみてください。
2.サラダ油の「サラダ」とは
サラダ油とはどのような油なのか分かったところで、気になるのが「サラダ」という名前。「なぜサラダ油と呼ぶの?」と、疑問を抱いたことがある人は意外と多いのではないでしょうか。
サラダ油のサラダとは野菜の成分が入っているわけではなく、サラダにかけることを目的で開発されたことを指しています。
初めてサラダ油が誕生した当時、主に植物油は揚げ物や焼き物に使われていました。しかし、西洋では食用の油をドレッシングのようにサラダにかけて味わっており、それをいち早く取り入れようとしたのがサラダ油なのです。
生食でも味わえるような良質な油であるということも、サラダ油が登場したときの大きなアピールポイントでした。
ちなみに、お菓子などでよく見かける「サラダ味」は、サラダ油を使用していることが由縁です。それくらいサラダ油は国民に浸透していることを表しています。
3.サラダ油とよく使う油の違い
サラダ油を使うときに、他の油とどこが違うのか気になる人も多いはず。そこで家庭でサラダ油と同じような使い方をする油と比較しすると、次の表のような違いがあります。
※精製度とは・・JAS規格では精製度が低い油と「精製油」、精製度の高い「高度精製油」に区分けされます。日本油化学会誌の「植物油の精製工程におけるトランス酸の生成および食用植物油脂に含まれるトランス酸について」という論文によると、油の精製過程でトランス脂肪酸などが生成される恐れがあり、精製が高いほどいい油だと位置づける基準ではありません。
ここからは、サラダ油と比較したい植物油の具体的な特徴や違いをご紹介します。
3-1.キャノーラ油
キャノーラ油とは、カナダで品種改良された「キャノーラ」というなたねを使ったなたね油の一種です。キャノーラ油が注目を集めた背景には、通常のなたね油に含まれていた「エルカ酸」と「グルコシノレート」を含まないためです。
「国産菜種油の調理特性の比較」という論文によると、エルカ酸は過剰摂取することで心臓障害を引き起こす恐れが、グルコシノレートも健康面への影響が懸念されていると記されています。この2つを含まないよう品種改良を重ねたキャノーラ油は、健康志向の人から注目を集めました。
キャノーラ油がなたね油の一種ということは先ほどご紹介したサラダ油の原材料の一つとなるため、精製方法によってはサラダ油の一種となります。
キャノーラ油の特徴は、サラダ油と呼ばれる他の植物と比べるとオレイン酸の含有率が多いこと。オレイン酸とは一価不飽和脂肪酸の一種で、人の体に含まれる主要な脂肪酸の一つです。
オレオサイエンス第7号に掲載された論文「高度不飽和脂肪酸とオレイン酸の健康栄養機能」によると、オレイン酸は善玉コレステロールを低下させず悪玉コレステロールのみ低下させるとのことで、ダイエット中の人や健康に気を遣っている人から注目を集めるようになりました。
ほぼ無臭で軽くあっさりとした風味なので、焼き物やお菓子作りど幅広い料理に活用可能です。大阪市立大学生活科学部紀要の論文によると燃焼点はサラダ油とあまり変わらないため、サラダ油の代用として揚げ物や天ぷらにも使えます。
3-2.米油
近年注目を集めている米油は、米ぬかから搾取した植物油で原料の三分の二が国産です。なたね油と同様に原材料がサラダ油と同じなので、精製方法によってはサラダ油の一種となります。
米油の特徴は他の植物よりも、抗酸化作用があるビタミンEが豊富に含まれているところ。厚生労働省が運営する「生活習慣病予防のための健康情報サイト」によると、抗酸化作用があれば過酸化脂質を作り出す活性酸素を取り除けるので、免疫力低下などの防止に効果が期待できるとのこと。
また、米油は脂肪酸のバランスがよく揚げ物をするときの泡立ちが少ないため、揚げ物や天ぷらにもおすすめ。サラダ油と同様に幅広い料理に使えます。
3-3.オリーブオイル
オリーブオイルとは、その名の通りオリーブの果実から搾取したオイルです。加熱処理などをせず香り高い一番搾りのオイルのみを使用したものを「バージンオリーブオイル」、中でも酸度が1%以下で欠点を有しないものを最上級の「エクストラバージンオイル」と呼んでいます。
一方で精製処理をしたオリーブオイルとバージンオイルを混ぜ合わせたものを「ピュアオリーブオイル」や「精製オリーブオイル」と呼んでおり、バージンオリーブオイルに比べると香りや風味がやや劣りますが、その分癖がなく料理などに使いやすいところが特徴です。
また、サラダ油よりもオレイン酸の含有率が高く、抗酸化作用のあるフェノール化合物を多く含んでいるいます。筑波大学生命環境系生命環境科学研究科・食機能探査科学分野の論文によると、フェノール化合物はメタボリック症候群や動脈硬化への予防が期待できるとのことで、健康管理を意識して油を選びたい人に向いています。
無色無臭のサラダ油とは異なり黄色い色味とフルーティーな香りがするので、香りを活かしてサラダにかけたり揚げ物に使ったりするのがおすすめ。ただし、揚げ物にはべたつきやすくあまり向いていません。
3-4.天ぷら油
サラダ油と似たような使い方をする油に「天ぷら油」があります。実際には「天ぷら油」という正式名称の油はなく「白絞油」と表記されるので、探すときには注意しましょう。
なたねや大豆をサラダ油よりも低い精製度で加工し、加熱したときに劣化しにくいようにしています。原材料はサラダ油と同じですが精製度合いが異なるため、サラダ油とは表記されません。
名前の通り揚げ物や天ぷらをおいしく味わえるよう作られた油で、一升缶に入れて業務用として販売していることも多いです。
サラダ油でも十分代用できますが「より天ぷらや揚げ物をカラッと揚げたい」場合には。専用の油として取り入れてみてください。
4 まとめ
「サラダ油とは何か?」という疑問がクリアになり、どのような油を使うべきか考えるヒントになったと思います。
では最後にもう一度、記事の内容を振り返ってみましょう。
◎「サラダ油」とは、JAS規定で定められた日本独自の油の名称
◎サラダ油の特徴は大きく分けて次の3つ
1)高度精製油と呼ばれる油の加工処理を行っている
2)JAS規格で指定されている9つの植物のいずれかを原料としている
3)JAS規格の厳格な基準をクリアしている
◎サラダ油の「サラダ」の由来は初めてサラダ油を製造したときに「サラダにかけて食べられる」
ことを前提としていたから
◎サラダ油と比較検討することが多い油は次の4つ
1)キャノーラ油:なたね油の一種で精製方法によってはサラダ油に。オレイン酸が豊富。
2)米油:米ぬかから精製されており、精製方法によってはサラダ油に。抗酸化作用のあるビタミンEが豊富。
3)オリーブオイル:オリーブの果実から採れる油で、サラダ油とは異なるフルーティーな香りが特徴。
4)天ぷら油:白絞油と呼ばれ、サラダ油よりも精製の精度を低くすることで揚げ物向きに。原料は、サラダ油と同じくなたねや大豆。
この知識をもとに、毎日の食卓でのサラダ油の使い方が分かり、より健康的でおいしく食事ができることを願っています。
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