菜種油とは、
「セイヨウアブラナという植物から採取される『植物油』」です。
スーパーなどでよく目にする代表的な油ですが「どんな油なのか、よくわからない」という方が多いのではないでしょうか。さらには、以下のような疑問を抱いている方もいるかもしれませんね。
- 菜種油は、どのような風味がある油なのか?
- 菜種油は、どのような効能のある油なのか?
- 菜種油は、どのような料理に適している油なのか?
今回の記事では、上記の質問にすべて回答いたします!
さらに気になる方が多い「サラダ油と違い」についても、詳しく解説していきます。「菜種油を購入するべきか否か迷っている方」のお力になれる記事です。
それでは早速、ご覧ください!
目次
1. 菜種油は「セイヨウアブラナ」を原料にした植物油
菜種油とは、セイヨウアブラナという植物から採取される「植物油」のことをいいます。
日本でもっとも多く生産されている油であり、世界シェアで見てもパーム油、大豆油に次いで3番目に多く生産・消費されているメジャーな油です。
現在、菜種油は調理油として確固たる地位を築いていますが、江戸時代には照明に用いる「灯油(とうゆ)」としても用いられていた経歴があります。
食用として一般庶民に広まったのは江戸時代の中期。外国から伝わった天ぷらの大流行に伴って、菜種油も普及していったといわれています。
1-1. 菜種油の原料
菜種油は、「菜の花(セイヨウアブラナ)」が咲き終わったあとにできる種子(タネ)が原料です。国内品種としては「キザキナタネ」「きらきら銀河」「ななはるか」「キタノキラメキ」「ななしきぶ」「キラリボシ」「菜々みどり」などといった具合に、さまざまな品種がありますが、国内における自給率は極めて低く、全消費量の0.04%に留まっているのが現状です。
私たちが日頃、食べている菜種油のほとんどは、外国で育まれたアブラナを原料にした海外製のものなのです。
1-2. 菜種油の種類
食用の菜種油は、JAS規格で「精製度合」によって分類されています。
精製度が最も低いのが「なたね油」で、それよりも精製されたものが「精製なたね油」、低い温度でも固形になったり濁ったりしないものが「なたねサラダ油」との名称で区別されています。
【精製度合】
なたね油<精製なたね油<なたねサラダ油
精製度合が低いものほど菜種本来の風味や香ばしさが強く感じられるものが多いです。ボトル確認すると、JASマークを囲うようにして記載されているので、チェックしてみましょう。
なお、一般に流通している菜種油のほとんどは「なたねサラダ油」です。
スーパーなどでよく目にする「キャノーラ油」も菜種油の一種で、「なたねサラダ油」に分類されるものを多く目にします。
1-3. 菜種油の成分
菜種油は、「オメガ9系脂肪酸」に分類される植物油です。「オメガ9系脂肪酸」に分類される油は「オレイン酸」を主成分にした油であり、悪玉コレステロールの濃度を下げる効果があるといわれています。植物油としては、オリーブオイル、べに花油、落花生油なども同系統の油に分類されています。
菜種油に含まれている脂肪酸組成の構成比は、オレイン酸が63.6 %、リノール酸が19.1%、リノレン酸(α-リノレン酸)が8.9%、その他の成分が8.4%となっています。
※参考 日本油脂検査協会「油脂検査協会2019|JAS製品の脂肪酸組成」
2.菜種油の3つの特徴
菜種油の原料や種類、含まれている成分などについては、ご理解いただけたかと思います。
そのほか、「酸化しづらい」「サラダ油の代わりに使える」「独特の風味が強いものもある」といった大きな特徴もあることはご存知でしょうか。
菜種油がもつ「植物油としての特徴」についても、掘り下げていきたいと思います。
2-1. 酸化しにくいので揚げ物に向いている
1つ目に挙げられるのが「酸化しにくいので揚げ物に向いている」という特徴です。
菜種油をはじめとする「オメガ9」に属する油は、一般的に「熱耐性」が強く、高温になっても、酸化しづらい性質を持っています。そのため、天ぷらなどをサクッと食感よく揚げることができます。
熱耐性は「臨界温度」というもので示されます。菜種油と同じくオメガ9に属するオリーブオイルやピーナッツオイルの臨界温度は210℃~220℃である一方、大豆油やコーン油、ごま油は140℃~150℃程度です。
オメガ9に属する植物油は70℃~80℃ほど熱耐性が高いのです。
揚げ物の際には、菜種油を使うとよいでしょう。黄色味がかったゴールドカラーなので、見た目にも食欲をそそる仕上がりが期待できますよ。
2-2. サラダ油の代わりに使える
2つ目に挙げられるのが「サラダ油の代わりに使える」という特徴です。
スーパーマーケットなどで最も広く流通している「菜種サラダ油」は、ほとんどクセがありません。そのため、サラダ油をはじめとするメジャーな油との互換性があるのです。
家にサラダ油しかなければ、料理のレシピに「菜種油」が指定されていても、サラダ油で代用してOKです!
サラダのドレッシングに用いたり、魚介類と一緒にマリネしたり、お菓子作りに用いたりといった具合に、サラダ油同様に使うことができます。
炒めたり焼いたりするなどの「普段使い」にも最適なので、いろいろな料理につかってみましょう!
2-3. 独特の風味が強い場合がある
3つ目に挙げられるのが「独特の風味が強い場合がある」という特徴です。
「一番搾り(圧搾絞り)」や「非焙煎」等の記載がある場合や、「少ない濾過回数」を謳う菜種油は、市販で流通している菜種油とちがって「香ばしさ」や「独特の香り」が強く感じられる場合があります。先ほどの3つの分類の中では、精製度合の最も低い「なたね油」がこれらの特徴に該当します。
こういった菜種油は、オリーブオイルのようにパンにつけて食べたり、ドレッシングとして使ったりすると、とても美味しいです。
焼いたり炒めたりといった「普段使い」というよりも、菜種油そのものの美味しさを味わいたい料理に使うとよいでしょう。
3. 菜種油を使うことで得られる2つの効能
菜種油は、普段の食事の中から、心筋梗塞や脳卒中、がんリスクを下げたいと考えている方に大変おすすめの植物油です。菜種油の利用で期待できる「健康面での効能」についても解説したいと思います。
3-1. 心筋梗塞や脳卒中のリスクを低減させる
1つ目に挙げられる効能が「心筋梗塞などのリスク低減」です。
国立循環器病研究センターによると、菜種油の60%以上を占めているオレイン酸は、心筋梗塞のリスクを低減させる効果があることがわかっています。
同じような報告は、カナダにあるトロント大学のデビッド・ジェンキンス教授が率いるチームの研究によっても明らかにされています。
同教授は、脳卒中や心筋梗塞の原因の一つになる悪玉コレステロールの値を下げる効果があると指摘しています。とりわけ品種改良した菜種油の一種である「キャノーラ油」を推奨しており、全粒粉のパンと一緒に食べることで、病気のリスクを低減すると述べています。
3-2. 酸化しづらいので、発がん性物質を作りにくい
2つ目にあげられるのが「発がんリスクの低減」です。
「オレイン酸」は酸化しづらい性質をもっているため、「過酸化脂質」を体内で作りだしにくいことが、総合南東北病院によって報告されています。
この「過酸化脂質」は、コレステロールなどの脂質が活性酸素のはたらきによって酸化したもので、がん・老化・動脈硬化などを引き起こす原因であるといわれています。
菜種油は「発がんリスクに強い油」であるといえます。病気のリスクに備えたい方は、普段使う調理油を菜種油に変えてみるとよいでしょう。
4. 菜種油とサラダ油の違い
普段、サラダ油を使っている方にとっては「サラダ油と菜種油の違い」も気になるのではないでしょうか。両者の代表的な違いについても、以下の表にまとめましたので、是非ともご覧ください。
上記の表内で注目すべきなのは「成分構成」です。
菜種油は先述の通り、オレイン酸が豊富に含まれているので、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを低減できますが、サラダ油は「リノール酸」という成分が高い傾向にあることが一般財団法人東京顕微鏡院の調査によって報告されています。
このリノール酸は、過剰摂取によって、善玉コレステロールを減らすだけではなく、悪玉コレステロールの量を増やしてしまう性質があるといわれています。
血中の悪玉コレステロールの増加は血栓を生じやすくし、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクを上げる恐れがあるので、大いに注意が必要です。
リノール酸の過剰摂取は「アレルギー疾患との関連性」も指摘されています。
麻布大学生命・環境科学部の守口教授は「取りすぎると免疫細胞が働きにくくなる。その結果、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー性炎症疾患を引き起こす」と述べています。
南東北病院も同様に、リノール酸の過剰摂取は喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎などのリスクを高めると報告しています。
「健康面」を考慮するならばサラダ油よりも「菜種油」を選びましょう。
5. 菜種油の選び方
サラダ油よりも菜種油を取り入れた方がいいことについては、お分かりいただけたかと思います。しかし、菜種油選びには注意が必要です。
菜種油と一口にいってもバリエーションがあり、適切なものを選ばないと健康を害する恐れがあるからです。
どういった観点で菜種油を選べばよいのかについても、理解しておきましょう。
5-1. エルカ酸の含有量が少ないものを選ぶ
是非ともチェックしておきたいのが「エルカ酸」の含有量です。
エルカ酸は、一部のセイヨウアブラナの品種に多く含有されており、健康へのネガティブな影響が懸念されている有害物質です。
カナダ厚生省衛生保護総局食品監督局・局長のS.W. グンナー博士の「低エルカ酸菜種油(レアオイル)」という論文において、エルカ酸が含有されている植物油を摂取したラットは「心臓への病変が起こりやすい」との研究結果が報告されています。
一方、低エルカ酸菜種油(レアオイル)はそういったリスクがなく、安全性の高い油だとする評価を下しています。
現在流通している菜種油のうち、品種改良によってエルカ酸の含有率がゼロになっているのが「キャノーラ油」です。グンナー博士の研究結果に従えば、キャノーラ油は、からだに安全な油だといえるでしょう。
低エルカ酸菜種油(レアオイル)の基準はエルカ酸の含有量が2%以下なので、その基準を満たす菜種油か、キャノーラ油を購入するとよいでしょう。
5-2. 「遺伝子組み換えでない」との表示があるものを選ぶ
続いてチェックしておきたいのが「遺伝子組み換えであるか否か」というポイントです。遺伝子組み換え商品の是非については、長年議論が続けられて来ましたが、ガン・白血病・アレルギー・自閉症などの慢性疾患の急増との関連性が、今なお疑われているのが現状です。
危険性を断言するのはむずかしいですが、なるべくであれば、遺伝子組み換えされている菜種油を摂取するのは避けた方が賢明といえるでしょう。
ただし注意点があります。日本には「遺伝子組換え食品表示制度」というものがあり、遺伝子組み換えを行っている場合には表示義務が課せられているうえ、基本的には流通も認められていませんが、菜種油ほか、一部の食品(とうもろこし・大豆・綿・てんさい・じゃがいも・アルファルファ・パパイヤ)については、遺伝子組み換えであっても、流通・販売が認められています。
さらに、菜種油を含めた一部の食品については、遺伝子組み換えであったとしても、その表示義務がありません。そのため、菜種油においては、遺伝子組み換え食品であるか否かについて確認することができないのが現状です。
しかし企業側の任意になりますが「遺伝子組み換えでない」との表示がされている商品もあり、そういった表示を元に、安全な菜種油を購入することは可能です。ラベルをしっかり吟味してから、購入すると安心でしょう。
6. まとめ
菜種油に関するさまざまな疑問は、解消されましたか?
では最後にもう一度、記事の概要についてまとめてみたいと思います。
- 菜種油は「セイヨウアブラナ」を原料にした植物油
- 酸化しづらいので、揚げ物に適した油である
- サラダ油の代わりに使える
- 適量の摂取で、脳卒中や心筋梗塞のリスクを低減させる
- 酸化しづらいので、発がん性物質を作りだしにくい
- エルカ酸の含有量が少ないものを選ぶべき
- 「遺伝子組み換えでない」との表示があるものを選ぶ
この記事が、「菜種油を購入するべきか否か」の判断を後押しできましたら嬉しいです。
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