
「フェリチン鉄とヘム鉄の違いは何?」
「どっちを選べば良い?」
あなたは今、数ある商品の中から鉄分サプリを選んでいる中で、フェリチン鉄に出会ったのですよね。ヘム鉄は知っていたものの、「フェリチン鉄」は初めて聞いた種類だったのではありませんか?
フェリチン鉄とヘム鉄は同じ鉄分ではありますが、実は構造や役割などが大きく違います。
例えば、手段や体内での使われ方など、以下のように異なります。
項目 | フェリチン鉄 | ヘム鉄 |
摂取手段 | ・サプリ ・一部の大豆加工製品 | ・サプリ ・動物性食品 |
体内での使われ方 | 貯蔵 ※鉄不足時はすぐ使われる | すぐに使われる 過剰になっても吸収され続ける |
吸収率 | ◎ | ◯※原料によって異なる |
副作用 | ほとんどない | 起こりやすい (吐き気、悪心、便秘など) |
上記の表を見てもお分かりの通り、フェリチン鉄とヘム鉄は同じ鉄分とは言え、たくさんの違いがあるのです。
そのため、どちらを選ぶべきかは、それぞれの特徴をふまえて事前にじっくり判断することが必要になるでしょう。
ただ、フェリチン鉄とヘム鉄のどちらかに決めたとしても、鉄分サプリはたくさん種類があるのでどれにしたら良いか迷ってしまいますよね。
「せっかく買ったけど飲みにくい…」「自分には合わないかも」となると、何度も買い直さなくてはいけません。
そのような失敗をしないために、鉄分サプリを選ぶ際のポイントも事前に押さえておきましょう。
そこでこの記事では、フェリチン鉄とヘム鉄の違いを徹底解剖し、それぞれのおすすめな人の特徴や、鉄分サプリを選ぶ際のポイントなどを網羅的に解説していきます。
最後までお読みになれば、フェリチン鉄とヘム鉄の違いがはっきりと分かり、自分にはどちらが必要かを判断できるでしょう。
あなたが自分に合った鉄分サプリを間違いなく選び、貧血とは無縁の健やかな毎日を過ごせることを願っています。
目次
1. フェリチン鉄とヘム鉄の違い1|構造
まず、フェリチン鉄とヘム鉄の大きな違いは、構造です。次の図をご覧ください。
上記のように、フェリチン鉄は、鉄がフェリチンというタンパク質に包まれている状態のことを言います。
これは鉄分が体内で貯蔵されている形態と同じため、フェリチン鉄は貯蔵鉄とも言われています。
一方、ヘム鉄は、鉄がポルフィリン環で覆われている状態です。ヘモグロビンは、ヘム鉄とグロビン(タンパク質)によって構成されています。
少し難しいですが、ポルフィリン環とは分子が輪っかのようにつながった化合物のことで、鉄分が吸収されやすいように機能しています。
以上を分かりやすくまとめると、
・フェリチン鉄の構造は体内に貯蔵されている貯蔵鉄と同じ ・ヘム鉄の構造は体に吸収されやすい形 |
ということになります。
2. フェリチン鉄とヘム鉄の違い2|摂取手段
次に、フェリチン鉄とヘム鉄で大きく違うのは、摂取手段です。
上記のように、フェリチン鉄は基本的にサプリでの摂取になります。
なぜなら最近の研究で、豆腐や厚揚げなど、一部の大豆加工食品にフェリチン鉄が含まれていると報告もありますが、食品に含まれるフェリチン鉄はごくわずかだからです。(参考/日本農芸化学会「化学と生物」vol55.515P)
一方、ヘム鉄は、サプリからでも食品からでも摂取できます。主に動物性食品に含まれていて、次の食品に多く含まれます。
・赤身の肉(レバー、もも肉など) ・赤身の魚(マグロ、カツオ、鮭など) ・貝類 ・煮干し |
このように、フェリチン鉄とヘム鉄では、摂取できる手段が大きく違うのです。
ちなみに、サプリに使われているフェリチン鉄は、大豆やエンドウ豆から分離抽出されています。一方、ヘム鉄は、豚や牛の血液から分離抽出されています。サプリに使用されている原料も、由来が異なるのです。
3. フェリチン鉄とヘム鉄の違い3|体内での使われ方
フェリチン鉄とヘム鉄は、体内での使われ方も違います。
フェリチン鉄は肝臓やすい臓などに貯蔵されている鉄分のことを指すので、サプリなどから摂取した場合も体内で貯蔵されます。
そして体が鉄分不足になった場合に必要に応じて体内に放出され、使われていくのです。
ただし、吸収経路はわかっていても、その体内での使われ方(体内動態)の詳細は、未だ解明されていません。
同様に、ヘム鉄も吸収経路やどのように吸収されるかは明らかになっていませんが、機能鉄としてすぐに使われることがわかっています。
また、フェリチン鉄もヘム鉄も、吸収された後に鉄イオンとなってからヘモグロビンの鉄として利用されます。
吸収された鉄分から作られたヘモグロビンは、具体的に、血中で次のような役割を担います。
・酸素の運搬 ・エネルギーの産生 ・筋肉合成のサポート |
つまり、フェリチン鉄とヘム鉄では、体内での使用のされ方が異なり、ヘム鉄はすぐに使われるのですが、フェリチン鉄はゆっくり吸収され体内に貯蔵されると考えられているのです。
4. フェリチン鉄とヘム鉄の違い4|吸収率
フェリチン鉄とヘム鉄は吸収率にも違いがあり、原料によってはフェリチン鉄の方が吸収率が高い可能性があります。
なぜなら、最近の研究から、フェリチン鉄は熱に強くヘム鉄は熱に弱いのではないかという研究データがあるからです。
フェリチン鉄については、フェリチンがほかのタンパク質に比べて熱安定性が高いという報告があります。(参考/山下一郎「球殻状たんぱく質フェリチンの固体表面吸着のナノ制御」)
また、豆腐や厚揚げなど、熱加工を施した大豆製品にフェリチン鉄の存在が確認されていて、フェリチン鉄は熱による吸収阻害を受けにくいのではないかと考えられているのです。(参考/日本農芸化学会「化学と生物」vol55)
実際、フェリチン鉄の吸収率は、鉄の吸収が高まらない非貧血の女性でも22~30%という値が示されており、吸収が良いことがわかっています。(参考/Iron in ferritin or in salts (ferrous sulfate) is equally bioavailable in nonanemic women. Am J Clin Nutr. 2004; 80(4):936-40.、Iron absorption from soybean ferritin in nonanemic women. Am J Clin Nutr. 2006;83(1):103-7.)
さらに、エンドウ豆由来フェリチン鉄における消化酵素などの影響による変性・分解と吸収機構の変化の検証によると、原料中のフェリチン鉄は変性しにくく、約7割が吸収できる状態を保っていたと報告されています。(参考/Pea Ferritin Stability under Gastric pH Conditions Determines the Mechanism of Iron Uptake in Caco-2 Cells. J Nutr. 2018;148(8):1229-1235.)
一方ヘム鉄は、内部温度が約60度以上になると分解が促進されるという研究結果が報告されています。
(参考/山本由喜子・松村多紀子「加熱時における動物性食品中のヘム色素の分解」)
また、ヘム鉄は、調整条件や製法でも吸収性が大きく異なることも報告されています。粗悪なヘム鉄原料の場合、熱変性等が起こっており吸収率が低い場合もあり得ます。
(参考/沼田 正寛, 副田 理美, 中村 豊郎:豚血液由来ヘム鉄濃縮物のラットにおける生体利用性 日本畜産学会報 1992; 63 (11) 1195-1202.)
上記のことから、フェリチン鉄は熱と消化酵素の影響を受けにくいため、ヘム鉄よりも吸収率が高い可能性があると言えるのです。
5. フェリチン鉄とヘム鉄の違い5|副作用
最後に、フェリチン鉄とヘム鉄の大きな違いである、副作用の有無について知っておきましょう。
上記のように、フェリチン鉄は副作用が起きにくいですが、ヘム鉄はフェリチン鉄に比べ副作用が起きやすいという一面があります。
その理由を分かりやすく説明していきましょう。
まず、鉄分を摂取して副作用が起きるのは、「フリーラジカル」が発生するからです。
上記のように、鉄分が体に吸収される際に発生する「フリーラジカル」が内臓を傷つけるため、胃のむかつきや吐き気、腹痛などが起こるのです。
フェリチン鉄も、ヘム鉄も、包まれている中の鉄が飛び出してイオン化すると、フリーラジカルが発生する可能性があります。
ヘム鉄は、構造上フェリチン鉄に比べ、熱や消化酵素で包んでいるポルフィリン環が壊れやすく、フリーラジカルが発生しやすいのです。
一方、フェリチン鉄の鉄を包むフェリチンは、ヘム鉄より熱や消化酵素に強いため、上記の「フリーラジカル」が発生しにくいいため、副作用が起こりにくいのです。
実際、フェリチン鉄のヒト臨床試験でも、胸焼け等の事象が報告されておらず、多くの利用者の声からも、フェリチン鉄の副作用が少ないことがわかります。
また、近年ヘム鉄は、メタボリックシンドロームや心血管系疾患のリスクを上昇させるという報告や、鉄の総摂取量は影響しないが、ヘム鉄の摂取量の増加が2型糖尿病の発症リスクを高めるという報告がなされており、その過剰摂取が問題となっています。
(参考/Dietary intakes of zinc and heme iron from red meat, but not from other sources, are associated with greater risk of metabolic syndrome and cardiovascular disease. J Nutr. 2012;142(3):526-533. |Dietary iron intake, body iron stores, and the risk of type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis. BMC Med. 2012;10(1):119. |Dietary iron intake, body iron stores, and the risk of type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis. BMC Med. 2012;10(1):119.)
6. フェリチン鉄がおすすめな人の特徴4つ
ここまでの説明で、フェリチン鉄とヘム鉄の違いがお分かりになったのではないでしょうか。
ただ、現状だと「自分にはどっちが合っているのかな?」と迷っている人も多いと思います。そこで、それぞれおすすめな人の特徴を紹介していきましょう。
まず、フェリチン鉄がおすすめな人の特徴は、次の4つです。
・慢性的に貧血症状がある人 ・いざという時に備えたい人 ・副作用を避けたい人 ・他の鉄サプリ独特の匂いや味が苦手な人 |
それぞれについて、もう少し詳しく説明していきますので、ぜひ参考にしてくださいね。
慢性的に貧血症状がある人
毎日倦怠感が抜けない、立ちくらみがひどいなど、慢性的に貧血症状がある人にはフェリチン鉄がおすすめです。
慢性症状がすでに出てきているということは、鉄分が絶対的に不足しています。そのため、鉄を摂取してもすぐに使われて、また鉄不足に陥ってしまうので、慢性貧血の人は貯蔵鉄を増やすことが必要です。
ただ、貧血にもさまざまな原因があり、鉄不足以外が原因になっている貧血もあります。フェリチン鉄は鉄欠乏性貧血以外には効果が期待できないので、慢性貧血の人はまず病院を受診して検査してもらいましょう。
鉄欠乏性貧血について、原因や症状などをさらに詳しく知りたい人は「ランニングは貧血になりやすい!原因と予防法を分かりやすく解説」の記事もぜひチェックしてください。
いざという時に備えたい人
一時的かつ急激に鉄分不足になってしまう事態に備えたいという人は、フェリチン鉄がおすすめです。
具体的には、次のようなケースが考えられます。
・生理の時に貧血になりやすい ・スポーツの後や残業が続くと疲れが抜けにくい ・妊娠の可能性がある、もしくは妊娠中か授乳中である |
上記は、一時的に鉄不足になりやすい状況の代表例です。
当てはまる人はフェリチン鉄を蓄えておくことで、貧血や慢性疲労を予防することができます。
副作用を避けたい
フェリチン鉄は副作用を避けたい人におすすめです。
5.フェリチン鉄とヘム鉄の違い5|副作用でもお話した通り、フェリチン鉄はフリーラジカルを発生させないので副作用が起きにくいからです。
そもそも体内にある貯蔵鉄と同じ構造でフェリチンに包まれているので、体内にスムーズに吸収されます。
今まで鉄サプリで胃がムカムカした人や便秘になったことがある人、鉄サプリを飲んだことはないけど副作用は嫌、という人はフェリチン鉄を選ぶと良いでしょう。
他の鉄サプリ独特の匂いや味が苦手な人
フェリチン鉄がおすすめなのは、鉄サプリ特有の匂いや味が苦手な人です。
一度でも他の鉄サプリを飲んだころがある人はお分かりだと思いますが、鉄サプリは独特の風味があります。
具体的には金属のような味で、人によっては「鉄くさい」「血のような風味」と感じる場合もあるでしょう。
フェリチン鉄は独特の鉄臭さがないので飲みやすく、鉄サプリの匂いや味が苦手な人にはおすすめです。
7. ヘム鉄がおすすめなの人の特徴
次のケースに当てはまる人は、ヘム鉄がおすすめです。
・スーパーやドラッグストアで欲しい時にすぐ購入したい ・安価なものを購入したい |
ヘム鉄はドラッグストアやスーパーなどでも販売されていて手に入りやすく、比較的安価で流通しています。
一方フェリチン鉄は、基本的にインターネットでの流通が多く、一般的なスーパーやドラッグストアでは販売されていないことが多いです。
そのため、気軽にサプリを購入したい、これまでもヘム鉄サプリを飲んでいて実感があったという人は、ヘム鉄を選ぶようにしましょう。
8. 鉄分サプリを選ぶ時のポイント3つ
ここまでお読みになり、「早速鉄サプリを購入しよう!」と決めた人も多いでしょう。そこで、あなたが心から満足できる鉄分サプリを選ぶために、ポイントをお伝えします。
具体的には、次の3つです。
・鉄分含有量の表記をチェックする ・安全性や品質をチェックする ・ほかの含有成分をチェックする |
それぞれについて、もう少し詳しくお伝えしていきます。鉄サプリを選ぶ際の参考になれば幸いです。
鉄分含有量の表記をチェックする
鉄サプリを選ぶ際は、鉄分含有量の表記があるかどうかをチェックしましょう。鉄分量の表記があれば商品を信頼できる目安になるからです。
厚生労働省の決まりでは鉄分含有量は表記しなくてもいいことになっています。そのため、鉄分がどのくらい含まれているかを記載していない商品も多いのです。
ただ、消費者としては、どのくらい鉄分が入っているのか当然知りたいですよね。
だからこそ、きちんと鉄分含有量を記載している商品は、消費者の気持ちをしっかり理解し、何より商品に自信を持っている証拠なので信頼できるのです。
安全性や品質をチェックする
満足できる鉄サプリを選ぶためには、安全性や品質もチェックしましょう。
鉄サプリは継続的に飲み続けるものなので、安全性や品質は非常に重要なポイントになります。具体的には次の点を確認しましょう。
・製造場所が明記されている ・添加物が入っていない ・安全な素材を使っている |
上記のポイントを押さえてチェックすれば、信頼できる商品を選ぶことができます。
ほかの含有成分をチェックする
鉄サプリを選ぶときは、ほかの含有成分もチェックしておきましょう。
マルチビタミンミネラルなど複数の成分が入ったサプリを服用している場合は、過剰摂取にならないよう鉄分単独のサプリがよいでしょう。
まだ何もサプリを飲んでいない場合は、鉄サプリにほかのビタミンやミネラルも含まれていれば、鉄不足だけでなく、体の機能を整えるためにさまざまな方面からアプローチできるからです。
例えば、ビタミンや葉酸なども一緒に摂取できるものがあります。特にビタミンCと一緒に摂取すると吸収率が上がるのでおすすめです。
9. まとめ
いかがでしたか?フェリチン鉄とヘム鉄の5つの違いについて、詳しく解説してきました。
最後にこの記事をまとめましょう。
◎フェリチン鉄とヘム鉄の違いは5つ
▼構造の違い ▼その他の違い
項目 | フェリチン鉄 | ヘム鉄 |
摂取手段 | ・サプリ ・一部の大豆加工製品 | ・サプリ ・動物性食品 |
体内での使われ方 | 貯蔵 | すぐに使われる |
吸収率 | ◎ | ◯ |
副作用 | ほとんどない | 起こることがある (吐き気、悪心、便秘など) |
◎フェリチン鉄がおすすめな人の特徴は4つ
・慢性的に貧血症状がある ・いざという時に備えたい ・副作用を避けたい人 ・他の鉄サプリ独特の匂いや味が苦手な人 |
◎ヘム鉄がおすすめなのはスーパーやドラッグストアで気軽に購入したい人
◎鉄分サプリを選ぶ時のポイント3つ
・鉄分含有量の表記をチェックする ・安全性や品質をチェックする ・ほかの含有成分をチェックする |
以上になります。まだ研究段階のものも多いですが、フェリチン鉄とヘム鉄には、体内でのはたらきや吸収率、副作用の起こりやすさに違いがあります。フェリチン鉄は、より効率良く吸収され、体への負担も少ないことが明らかになってきていますが、手軽に購入できるという点ではヘム鉄にもメリットがあります。
この記事でフェリチン鉄とヘム鉄の違いを理解し、自分に合った鉄サプリを選べることを願っています。
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