子どもの食物アレルギー|知っておきたい基本知識と注意点

「子どもを食物アレルギーにさせたくない」
「子どもが食物アレルギーを発症して、特定の食材を一生食べられないことになったらどうしよう」

お子さんがそろそろ離乳食を開始する時期になり、食物アレルギーのことが気になり始めたところですね。

実際のところ、食物アレルギーは離乳食開始と同じ0歳で発症することがもっとも多く、6歳までの発症が8割を超えます。

しかしたとえ食物アレルギーになったとしても、乳児期に発症した食物アレルギーは、専門医の下で適切な医療を受けることで、小学校入学頃までに9割が治ると言われているため、どうぞ安心してください。

参考:厚生労働省 4食物アレルギー

とはいえ、食物アレルギーになってしまったら、日々の食材の置き換えだけでなく、外食や旅行にも影響が出るのではないかと、心配も多いことでしょう。

そこでこの記事では、食物アレルギーについて、種類や注意すべき食材、離乳食の進め方についてわかりやすく解説していきます。

本記事でわかること
  • 子どもの食物アレルギーの種類を知ることができる
  • 子どもの食物アレルギーを引き起こす可能性のある食材を知ることができる
  • 子どもの食物アレルギーの症状と対策を知ることができる
  • 子どもの食物アレルギーをできるだけ回避する離乳食の進め方を知ることができる
  • 子どもの食物アレルギーの検査方法を知ることができる
  • 子どもの食物アレルギーを避けるための授乳中のママの栄養を知ることができる


この記事を読むことで、食物アレルギーのリスクからお子さんを守り、もしも食物アレルギーになってしまったとしても、落ち着いて対応することができます。

ぜひ最後までお読みいただき、お子さんの楽しく豊かな食生活を作る参考になさってください。

目次

1. 子どもの食物アレルギーとは

食物アレルギーとは、ある特定の食べ物を食べたり手で触れたりした後に、アレルギー反応が現れる疾患のことです。

原因食物を摂取してから30分〜2時間以内に、主に以下のような症状が1つまたは複数現れます。

体の場所症状
全身かゆみ、赤み、発疹
くちびるや舌の腫れ、イガイガなどの違和感
充血、まぶたの腫れ、かゆみ
くしゃみ、鼻水、鼻づまり
お腹下痢、おう吐、腹痛
呼吸せき、呼吸困難
神経元気がない、尿や便をもらす、頭痛、ぐったりする
その他脈が速い、顔が青白い

参考:厚生労働科学研究班による 食物アレルギーの診療の手引き2023

食物アレルギーの原因となる物質であるアレルゲンは、主に食べ物に含まれるタンパク質です。

人間の体には、ウイルスや細菌などの病原体から身を守る「免疫」という仕組みが備わっています。

ウィルスや細菌が体内に侵入すると、それを攻撃したり排除したりする抗体がつくられるのですが、実はこのウィルスや細菌そのものが、タンパク質でできているのです。

ウィルスや細菌に対して免疫反応を起こすための抗体が、食べ物に含まれるタンパク質に対して免疫反応を起こしてしまうことで、アレルギー反応が生じます。

とはいえ、子どもは、成長とともに消化管機能や免疫学的機能が成熟することで、ほとんどの人が徐々に食物アレルギーの原因となる食べ物を食べられるようになるので、安心してくださいね。

2. 子どもの食物アレルギーの種類は5つ

子どもが発症する食物アレルギーには、発症する時期や特定の条件下で起こるものなど、大きく以下の5つの種類があります。

  • 乳児消化管アレルギー:生後すぐから
  • 食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎:生後3ヶ月頃から
  • 即時型アレルギー:離乳食以降
  • 食物依存性運動誘発アナフィラキシー:小学生以降
  • 口腔アレルギー症候群:小学生以降


発症する時期の早いものから順に、それぞれの特徴や原因を見ていきましょう。

乳児消化管アレルギー

新生児期や乳児期に、下痢や血便、おう吐などの症状を引き起こすものです。

ミルクに含まれるたんぱく質に対するアレルギー反応で、原因のほとんどは粉ミルクですが、まれに母乳が原因で発症することもあります。

いわゆる普通の食物アレルギーと異なり、じんましんや発疹などの症状は出ません

ミルクを飲んで数時間〜数日経ってからやっと下痢や血便、おう吐などの症状が出現します。

しかしそもそも原因となるミルクを毎日飲み続けていることから、症状が慢性的に続き、「体重がなかなか増えない」という事態になって初めて気づくことが多いものです。

アレルギー用ミルクに変更して症状の改善があるかなどを確認していき、多くは1歳から2歳までに治っていきます。

食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎

医師の診断を受け、適切な治療をしているにも関わらず、なかなか乳児期のアトピー性皮膚炎が治らない場合は、食物アレルギーを合併している(=食物アレルギーが関与している)可能性があります。

アトピー性皮膚炎によって皮膚バリアが壊れた状態で、卵や小麦などのアレルゲンを経皮摂取する(皮膚を通して物質を体内に取り込む)ことで、そのアレルゲンに対する免疫が作られ、食物アレルギーを誘発しやすくなるのです。

家庭の中だけでなく、保育園や児童館など集団生活の場の床には、目に見えないほどの小ささのアレルゲンが、日常的に存在しています。

アレルゲン自体は正常な皮膚バリアの肌で触れる分には問題ないのですが、アトピー性皮膚炎で皮膚バリアが壊れた状態で接触することで、体内に入り込みやすくなってしまうのです。

肌バリアを保つため、しっかりとスキンケアをすることが大切です。

即時型アレルギー

特定の食べ物を摂取してから30分〜2時間程度で1. 子どもの食物アレルギーとはで挙げたようなアレルギー症状を起こすものです。

赤ちゃんから大人まで、年齢を問わず発症するものですが、最も患者数が多いのは0~1歳です。

前述したように、成長とともに消化管機能や免疫学的機能が成熟することで、多くは自然に治っていきます。

食物依存性運動誘発アナフィラキシー

主に小学校以降から成人にみられるアレルギーで、特定の食べ物を摂取してからおおよそ2時間以内に運動をすることで症状が現れるものです。

原因となる食物を食べたあとに運動をすることによって、アナフィラキシー(発症後、極めて短い時間のうちに全身にあらわれるアレルギー症状)が起こるのが特徴です。

発症した場合は、すぐに救急車を呼んで処置してもらう必要があります。

原因の食べ物を食べただけ、あるいは運動をしただけでは、症状が出ることはありません

 口腔アレルギー症候群

主に小学校以降に発症するアレルギーで、果物や生野菜を食べた後、数分以内に唇、舌、口の中や喉に、以下のような症状が現れるものです。

・イガイガする
・しびれる
・腫れる
・赤くなる

これは植物由来の病原菌による感染症やケガ、ストレスなどから身を守るための免疫反応です。

口腔アレルギー症候群の原因となるアレルギー物質(=アレルゲン)は小腸に到達する前に壊れるため、口の中だけで反応が起きるのが特徴です。

また、植物由来のものに反応する抗体のため、花粉症を併発しているケースも多いです。

多くは食後しばらくすると自然に治りますし、ジャムや加工品など加熱したものでは症状は出ません。

3. 子どもの食物アレルギーで見るべき特定原材料一覧

※「食物アレルギーを引き起こす可能性がある食材」というだけなので、これらの食べ物を子どもに食べさせてはいけない、という一覧ではありません。


食物アレルギーを引き起こす可能性のある食べ物は、「特定原材料」と言って、消費者庁によって表示が義務付けられていたり、推奨されたりしています。

アレルギーの新規発症数や、症状が出た場合の重篤度など、表示する必要性の高い原材料をまとめたもので、アレルギー患者が商品を選ぶ際の指標となります。

品目は随時改訂されていて、2001年時点では特定原材料は「小麦、そば、卵、乳、落花生」の5品目でしたが、2008年にえびとかにが、2023年4月にはくるみが追加されました。

【 くるみの特定原材料表示の詳細はメーカーに問い合わせを! 】
2023年4月に特定原材料となったくるみ義務表示のについては、2年間の猶予期間が設けられています。

そのため、2025年3月末日までは、くるみを使用していても原材料に含まれるアレルギー物質として「くるみ」の表示がされていない製品が販売されている可能性があります。

特に、賞味期限の長い商品の場合、2025年4月以降もしばらく販売されていることがあるため、くるみが原材料に含まれているかどうか気になる場合は、食品メーカーに問い合わせて確認することも必要です。


ただし、特定原材料表示の対象となっている食品は「あらかじめ容器包装された加工食品と添加物」のみです。

以下の場合はアレルゲンとなる特定原材料の表示は義務付けられていないため、お店の人に直接確認する必要があります。

・飲食店(ファミレスなど、一部自主的に表示している飲食店も多い)
・量り売りのお惣菜
・店内調理しているお弁当やパン、菓子 など

ここからは、特に0歳児の三大アレルゲン食材である「鶏卵・牛乳・小麦」について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

 鶏卵

鶏卵は、いわゆる「ニワトリの卵」です。

色や形から見た目に分かる場合もありますが、ハンバーグやそばのつなぎに使われていることもあるため、特定原材料表示に注意が必要です。

鶏卵を含む加工食品
  • マヨネーズ
  • 洋菓子の一部(クッキー、ケーキ、プリン、アイスクリームなど)
  • 練製品(かまぼこ、はんぺんなど)
  • 食肉加工食品の一部(ハムやウィンナー類のつなぎ) など
除去する必要のないもの
  • 鶏肉、魚卵
  • 卵殻カルシウム


一般的に、
卵白の部分にアレルゲンとなるタンパク質が含まれているため、卵黄であれば摂取できるというケースも少なくありません。

また、長く・高温で加熱するほどアレルゲンとなるタンパク質が破壊されるため、たとえ卵アレルギーを発症したとしても、固茹で卵の卵黄から少しずつ慣らしていくことで、将来的に安心して食べられるようになるケースがほとんどです。

【 鶏卵の代替品 】
家庭で料理をする場合、鶏卵を使用しなくても、安心しておいしく作る工夫ができます。

手作り菓子の材料で使う場合:
・ゼラチン
・寒天
・片栗粉
・コーンスターチ
・米粉 など

揚げ物の衣で使う場合:
・片栗粉
・コーンスターチ
・米粉
・小麦粉 など

ひき肉料理のつなぎで使う場合:
・片栗粉
・コーンスターチ
・すりおろしたじゃがいもやれんこん
・水切りしてつぶした豆腐
・みじん切りにした野菜 など

ホットケーキなどで生地を膨らませるために使う場合:
・重曹
・ベーキングパウダー
・つぶしたバナナ など


うずらの卵は、鶏卵に比べてアレルギー反応を起こしにくいと言われています。

うずらの卵に含まれるタンパク質は、ニワトリのものとは異なり、人間の腸内物質と親和性を持っているからです。

必ずかかりつけの医師に相談のうえ、少量から試してみるのも良いでしょう。

小麦

小麦というとパスタやうどんなど炭水化物のイメージが強いものですが、実はさまざまなタンパク質を含んでいます。

特に「グルテン」という、小麦ならではの弾力を生み出す物質が、小麦アレルギーの原因物質となるのです。

小麦を含む加工食品
  • パン、パン粉
  • スパゲティやマカロニなどのパスタ
  • うどん
  • ラーメン
  • 餃子やシュウマイの皮
  • たこ焼き、お好み焼き
  • カレーやシチューのルウ
  • グラタン
  • 洋菓子類(ケーキ、クッキー、ドーナツ)
  • 揚げ物の衣
  • ドレッシングなど一部の調味料 など
除去する必要のないもの
  • しょうゆ
  • 味噌
  • 穀物酢
  • 麦茶


麺類の中で、そばは基本的にそば粉からできているため小麦アレルギーの対象にはなりませんが、「二八蕎麦(にはちそば)」と呼ばれるものはうどん粉(=小麦粉)2:そば粉8でできているため、原材料の確認が必要です。

【 小麦の代替品 】
家庭で料理をする場合、小麦を使用しなくても、安心しておいしく作る工夫ができます。

手作り菓子の材料で使う場合:
・米粉(上新粉、白玉粉など)
・雑穀粉(きび、あわ、ひえ、トウモロコシなど)

うどん、パスタなどの麺類で使う場合:
・米粉の麺(米粉麺、フォー、ビーフンなど)
・雑穀麺(あわ麺、きび麺、ひえ麺、ホワイトソルガム麺など)

餃子やシュウマイなどで使う場合:
・生春巻きの皮(ライスペーパー)
・米粉で作られた餃子やシュウマイの皮

カレーやシチューのルウ
・米粉
・片栗粉
・コーンスターチ
・アレルギー対応のルウ

揚げ物の衣
・コーンフレーク
・大豆フレーク
・春雨を細かく砕いたもの
・米粉パンのパン粉


最近では体質改善や体調管理のために「グルテンフリー」という小麦の摂取を控える食事が増えているため、代替品やその選択肢も非常に増えています。

子どもの小麦アレルギーをきっかけに小麦を控えることで、親の体調が良くなったというケースもあるため、楽しみながら前向きにつきあっていくと良いでしょう。

乳アレルギーは、一般的に牛乳を指すものですが、ヤギやヒツジの乳も牛乳とタンパク質の構造が似ているため、どの乳であっても注意が必要です。

また、乳は加熱や発酵などの処理をしてもアレルゲンとなるタンパク質が変化しないため、加工食品や乳製品のほとんどがアレルギー対象となります。

牛乳を含む加工食品
  • ヨーグルト
  • チーズ
  • バター
  • 生クリーム
  • はっ酵乳などの乳製品
  • れん乳
  • 粉ミルク
  • アイスクリーム
  • ホエイ
  • カゼイン
  • 脱脂粉乳
除去する必要のないもの
  • 乳化剤
  • 乳酸カルシウム
  • 乳酸ナトリウム


「牛乳」や「乳加工食品」のアレルギーに神経質になりすぎるあまり、文字だけで極端に食材除去を行ってしまうケースがありますが、以下の食材で乳アレルギーを発症することはまったくないため、安心してください。

・牛肉
・カカオバター

【 牛乳の代替品 】
家庭で料理をする場合、牛乳を使用しなくても、安心しておいしく作る工夫ができます。

手作り菓子の材料で使う場合:
・豆乳
・豆乳ホイップ
・ココナッツミルク
・アレルギー用ミルク
・果物のピューレ

シチューやグラタンで使う場合:
・米粉
・片栗粉
・コーンスターチ
・すりおろしたり、やわらかく煮崩したジャガイモやカボチャ
・アレルギー対応のマーガリン


牛乳アレルギーになると、乳製品をとらないことでカルシウムが不足しがちになります。

カルシウムは骨格を構成する重要な栄養素なので、小魚などほかの食品で積極的にカルシウムを取る心がけも必要になってきます。

4. 子どもの食物アレルギーの症状と対策

離乳食の開始とともに気になる子どもの食物アレルギーの多くは、原因となる食べ物を食べてから、30分〜2時間以内に症状の起きることが多いです。

いつもとは違う様子が見られた場合、まずはその症状から、食物アレルギーなのかどうか、そして食物アレルギーだった場合、どれくらいの重症度なのかを落ち着いて判断しましょう。

離乳食を食べた後の症状と食物アレルギーの可能性
分類食物アレルギーの
可能性は低い
食物アレルギーの
可能性が高い
症状・口の周りや手など食材に触れたところだけが赤くなる
・痒みや痛みが出ていない
・右記の症状が出ていない
・全身にかゆみを伴う発疹や赤みが出る
・目が腫れている
・充血している
・くちびるや舌が腫れている
・くしゃみ
・鼻水 など
・咳が止まらない
・呼吸が苦しそう
・おう吐
・下痢
・尿や便を漏らす
・ぐったりしている
・元気がない
・顔が青白い など
対策・日頃のスキンケア
・食前のかぶれ予防(赤くなりやすい部分にワセリンなどを塗る)
かかりつけの小児科医に相談救急車を呼ぶ


特に、食物アレルギーの90%に起きる皮膚症状の変化についての判断は、以下を目安にしてください。

画像出典:厚生労働省 第2回アレルギー疾患対策推進協議会 “食物アレルギー”

じんましんは、ポツポツと小さな発疹ではなく、大きな発疹がつながってさらに大きくなっていくものです。

食材に触れたところだけでなく、お腹や脇の下、腕の内側などの皮膚が赤くなるため、様子がおかしいと思った場合は、服の中の肌の状態も確認するようにしましょう

【 食物アレルギーの初期対応に「水を飲ませる」のは要注意 】
じんましんの症状は、体の表面だけでなく体の内部(食道や気道など)でも起きていることがあるため、無理に水を飲ませると誤嚥(ごえん:飲み込んだものが食道ではなく気道に入ること)を招く恐れがあり、とても危険です。

水を飲ませても「アレルゲンを薄める」ことはできないため、本人の状態を見て、可能であればうがいや口の中をすすぐ程度にしてください。


5. 子どもの食物アレルギーに気をつけながら離乳食を進める方法

離乳食では、食物アレルギーについても配慮しながら進めていくことが大切です。

乳幼児期の食物アレルギーはほとんどが治るとはいえ、ほんの少しの注意によって、ママもお子さんも安全に安心して食べることの楽しみを重ねていくことができるからです。

とはいえ、ただでさえ柔らかさや温度、栄養バランスに気をつける必要があるうえ、初めての離乳食作りは本当に骨の折れるもの。

そのため、食物アレルギーについての配慮は「ひとまずこれだけやっておけば安心!」という3点だけ押さえておきましょう。

・スケジュール通り離乳食を進める
・離乳食記録をつける
・小児科の空いている時間内に食べさせる

ひとつひとつはとても簡単なことですが、「もしも」の際に必ずあなたの助けとなるものです。

それぞれ具体的なやり方を見ていきましょう。

 スケジュール通り離乳食を進める

決められた離乳食のスケジュール通りに進めていきましょう。

大切なのは、開始時期、回数や量、柔らかさ、与える食材などを、自己判断で勝手に変えないことです。

離乳食のスケジュールについては、自治体や病院、保健センターの保健師さん・栄養士さんなどから指導を受けていることと思います。

参考:子ども家庭庁
生後5か月からの「離乳スタートガイド」
生後5か月からの「離乳スタートガイド」 別添スケジュール

食物アレルギーへの心配から、離乳食そのもののスタート時期を遅らせたり、子どもの食物アレルギーに多い「鶏卵・小麦・乳」をいつまでも与えないようにしたりするのは、逆効果になります。

消化機能の成長に合わせ、適切な時期に適切な栄養を与えながら、食物アレルギーを起こす食材についても少量ずつ試していくことで、重篤な危険を避けることができるものです。

心配なことがある場合は、かかりつけの小児科の先生や保健センターに直接質問したり、子ども家庭庁やお住まいの自治体のHPで情報を確認するようにして、根拠のないウワサや憶測に振り回されないようにしてください。

離乳食記録をつける

離乳食でいつ・どんな食材を・どれくらい与えたのかが分かるように、記録をつけておきましょう。

子どもの食物アレルギーは、抗体ができていることで起こる反応です。

そのため、「前に食べたり触れたりしたことがある食材かどうか」の判断のできることが重要なものになってきます。

実際には食べなかったとしても、手で掴んでみたり口の近くに運んで頬に触れたりという経験でも、アレルギーの抗体ができることがあるのです。

食材をひとつひとつ書き出すのは、最初のうちは手間にはなりませんが、離乳食の回数や品数が増えてくると、なかなか面倒になってしまいます。

食べさせる直前の状態を写真に撮っておいたり、離乳食アプリを活用したりして、できるだけママの手間を減らしながら記録をつけておくことで、いつもと様子が異なった際、原因食材にすぐに気がつくことができるでしょう。

小児科の空いている時間内に食べさせる

以下の場合は特に、小児科の空いている時間に食べさせるようにしましょう。

・初めてまたは2回目に食べさせる食材
・「特定原材料」の28品目を食べさせる時

万が一食物アレルギーと思われる症状が出てしまった場合でも、すぐにかかりつけの小児科に駆け込められるため、安心です。必ず、小児科の診療時間を確認しておきましょう。

医師に相談する際にも、離乳食記録があると話がスムーズに進みますので、離乳食記録を持っていくことを忘れないようにすることも大切です。

【 子どもが大きくなってきたら|本人への食物アレルギーの教育も大事 】
食物アレルギーが出てしまった場合、子ども本人に食物アレルギーがあることを教育することも必要になってきます。

お友達と交流したり、集団生活を送るようになったりすると、知らないところで食物アレルギーの食材に悪気なく触れてしまうことがあるからです。

しかし、「自分だけが食べられない」ことは、子どもにとって大きなストレスになります。

「絶対に食べちゃダメ」
「こんなもの触わるのもダメ」

お子さんを心配するあまり、上記のような強い言い方で禁じてしまうと、ストレスに加えて恐怖を与えてしまいます。

食物アレルギーは、医師の指導を受け、正しく処置していくことで克服できるものです。

治療と並行して「いまのあなたにはまだ早いね」「もうちょっとしたら食べられるようになるね」と伝えることで、親も子もストレスを軽減しながら、前向きに完治を目指しましょう。


6. 子どもの食物アレルギーを把握したい場合の検査3つ

代替食材もあるため、落ち着いて対処すればほとんどが治る子どもの食物アレルギーですが、どうしても不安な場合は、医療機関で検査を受けることによって、食物アレルギーのアレルゲン食材を把握することができます。

検査方法は、主に以下の3つがあります。

・血液検査
・皮膚テスト
・食物経口負荷試験

ただし、小児科の先生ごとの方針によって、症状がない状態での検査については、実施してくれるかどうか分かれるところです。

かかりつけの小児科や、出産した病院にまずは相談してみましょう。

それぞれどんなことをするものなのか、具体的に説明していきます。

血液検査:血中抗原特異的IgE抗体検査

個別の食べ物ごとに、血液中の抗体の量を測る検査です。

特定の食べ物に対する抗体の値が高い場合、その食べ物を摂取することでアレルギー症状の出る可能性が高くなります。

しかし、抗体の値の高い食べ物だからといって、食べたら必ずアレルギー症状が出るというものではありません。

実際に、血液検査でアレルギー食材だという結果が出ても、食べて症状が出なければ、ひき続き問題なく摂取することができます

食物アレルギーの診断の補助的な役割の検査と言えるでしょう。

皮膚テスト:プリックテスト

食物アレルギーのほか、花粉やハウスダストなどの原因物質の診断に使われる検査です。

アレルゲンと思われる物質を腕の内側に一滴たらし、針を軽く押し当てて、15分後に赤く腫れたものが陽性と診断されます。

この検査も、血液検査と同様に、実際に食べて問題のない食べ物であれば、除去や制限をする必要はありません。

血液検査と組み合わせることでさらに精度の高い診断をすることができる、食物アレルギーの診断の補助的な検査です。

食物経口負荷試験

医師の指導のもと、アレルギー食材と思われる食べ物を実際に食べさせ、症状が出るかどうかを確認する試験です。

アレルギーの原因と思われる食べ物を、少しずつ時間をかけて食べさせます。

原因食材を確定したり、消化機能の成長によって食べられるようになっているかを診断したりする、確実で信頼性の高い試験です。

ただし、この検査では検査中に重篤な症状が出る危険性もあるため、症状が出たときにすぐ対応ができるよう、必ず入院設備などが整った病院で行うことが大前提です。

食物経口負荷試験を自宅で行うことは極めて危険なので、絶対に行わないでください。

7. 完母ママは特に注意!6ヶ月以降の鉄分不足で子どもは食物アレルギーを発症しやすい

完母で育てている赤ちゃんの場合、離乳食が始まる生後6ヶ月ごろから、鉄分不足により食物アレルギーが発症しやすくなる可能性があるため、注意が必要です。

赤ちゃんの体に蓄えられた鉄分は、生後6ヶ月頃から減少しはじめ、生後9ヶ月頃には鉄分不足になる危険があります。

なぜなら、生後9か月頃の離乳食は一日3回となり量も増えますが、この時期はまだ鉄分の多い食材をたくさん食べることができないからです。

また、離乳食を開始することで母乳やミルクの摂取量が少なくなっていくこともあり、不足する鉄分を補うことがさらに難しくなっていきます。

鉄分は、皮膚や粘膜の生成・再生に必要なだけでなく、全身に酸素を送り、脳の発達にも影響を及ぼす重要な栄養素です。

鉄分が不足することで、以下のような事態を招きます。

・乾燥肌
・アトピー性皮膚炎
・口内炎
・粘膜が弱くなる
・爪がもろくなる

子どもの食物アレルギーは、健康な肌や粘膜を保ち、食べ物に含まれるタンパク質を「異物」だと認識させないようにすることで、ある程度防ぐこともできるものです。

実際、アトピー性皮膚炎の治療で行われる「栄養療法」でも、鉄分摂取の有効性が認められています。

特に赤ちゃんを完母で育てているママは、長年の月経に加えて妊娠から出産、授乳を経験する中で、そもそもママ自身の鉄分が不足していることが多いものです。

日頃のスキンケアと合わせて、親子で意識的に鉄分の摂取をすることで、大切な我が子を食物アレルギーから守りましょう。

鉄分サプリメントはフェリチン鉄がおすすめ!
離乳食が始まっても、大切な親子のスキンシップとして、母乳の時間はもう少し続けていきたいものですよね。

とはいえ、ママ自身の鉄分が不足すると、母乳であげられる鉄分も少なくなってしまいます。

赤ちゃんが母乳からも離乳食からも充分な鉄分が取れないと、食物アレルギーを始め、脳の発達にも影響があることから、離乳食初期の完母ママは特に自分自身の鉄分摂取を心がけましょう。

とはいえ、充分な鉄分を食事だけで摂取するのは、なかなか難しいものですよね。

そのため、鉄分はサプリメントを使って上手に取り入れることがおすすめです。

サプリメントで取れる鉄分には、以下の4種類があります。

ヘム鉄:動物性食品に多く含まれる。吸収率が高い
非ヘム鉄:植物性食品に多く含まれる。吸収率は高くない
キレート鉄:キレート加工を施して吸収率を高めた非ヘム鉄
フェリチン鉄:体内で生成される鉄分。別名「貯蔵鉄」と言われる

この中で、乳児期のママに特におすすめなのが、フェリチン鉄のサプリメントです。

なぜなら、フェリチン鉄は体内で蓄積される貯蔵鉄と同じ構造をしているため、以下のように体にフィットしやすいのです。

・鉄の味がしない
・吸収率がよい
・お腹が痛くなるなど、副作用が起こりにくい

そして鉄分をサプリメントで補う際には、以下の点に気をつけて選ぶと、ママだけでなくお子さんも飲みやすく、離乳食にも一緒に使うことができるから便利です。

・合成添加物がないこと
・オーガニック素材であること
・アレルゲンのないこと
・パウダー状であること

お子さんを食物アレルギーから守るため、不足しがちな鉄分を、サプリメントで賢く選んで手軽に取り入れましょう。

8. 子どもの食物アレルギーでよくあるQ&A

ここでは、食物アレルギーに関するありがちな疑問や不安にお答えします。

先輩ママも同じような疑問や不安を抱えながら、ひとつひとつ正しい知識を得て離乳食を進めています。

どうぞ参考になさってください。

Q1. 親が食物アレルギーだと、子どもにも遺伝しますか?

食物アレルギーは、子どもに遺伝するものではありません。

親がアレルギー素因を持っている、いわゆる「アレルギー体質」である場合、子どもも何らかのアレルギー素因を持っている可能性はあります。

しかし、それが必ずしも食物アレルギーとして現れるわけではありません。

離乳食スケジュールに合わせた適切な食事管理や、万が一の場合の環境整備を行うことで、発症のリスクを低下させたり、早急な対応ができます。

Q2. 授乳していたら、子どもの食物アレルギー食材は親も食べない方がいいですよね?

授乳中に親が食物アレルギーの原因となる食材を摂取しても、子どもの食物アレルギーの発症には直接的な関係はありません。

母乳を通じて、親が摂取した食材の成分が子どもにわずかに伝わることはあります。

しかし、それで子どもがアレルギーを発症するケースはほぼありません。

血液検査などをすると抗体を持っている場合がありますが、実際に食べても問題のないことがほとんどです。

Q3. 食物アレルギーを起こしたら、ほかのアレルギーにもなりやすいですか?

食物アレルギーを持つ場合、アレルギーマーチ(ほかのアレルギー疾患への進行)の危険性は高まりますが、適切に対処すれば予防や管理が可能です。

アレルギーマーチとは、乳幼児期の食物アレルギーが、成長とともに以下のアレルギー疾患に進行する現象を指します。

・アトピー性皮膚炎
・喘息
・アレルギー性鼻炎 など

しかし、食物アレルギーがあるからといって必ずほかのアレルギー疾患に繋がるわけではなく、早めの発見と適切な治療でリスクを抑えることができます。

皮膚バリアを保つスキンケアや、アレルゲンの管理と対処を徹底することで、アトピー性皮膚炎や喘息への進行を予防できることも、研究で証明されています。

Q4. 一度食物アレルギーを起こしたら、怖くて新しい食材を与えられなくなりました…

また新たな食材で食物アレルギーが出てしまうのではないかと、心配になってしまいますね。

でも、お子さんのためには、新しい食材を与えることを恐れず、離乳食のスケジュールに合わせた適切なタイミングで進めていくことが大切です。

なぜなら、新しい食材の摂取を遅らせる方が、食物アレルギーを発症させる危険性があるからです。

前述もしましたが、近年の研究では、離乳食の開始時期や新しい食材を遅らせることが、アレルギー発症のリスクを高めることが分かっています。

与える時期を過度に遅らせると、免疫がその食品を「異物」として認識しやすくなるのです。

適切な時期に、適切な方法で、少量ずつ試すことで、新しい食材も安全に進めていってください。

Q5. 上の子が食物アレルギーなので、下の子も同じ食材でアレルギーを起こすのでしょうか?

上の子が食物アレルギーだからといって、下の子が同じ食材でアレルギーを起こすわけではありません。

同じ家庭、同じ両親の下に生まれ育つ場合、アレルギー素因や体質を共有している可能性はありますが、アレルギーが同じパターンで現れるとは限らないのです。

近年の研究では、上に兄姉のいる子ほど、食物アレルギーを起こしにくいというデータもあります。

とはいえ、下の子が別の食材でアレルギーを起こす可能性もあるため、それぞれに適切な観察をしてあげることが大切です。

9. まとめ

今回は、子どもの食物アレルギーについてお伝えしました。

子どもの食物アレルギーについては、正しい知識を持って準備しながら、いざという時の対処法についても押さえておくと安心です。

最後に、本記事をまとめていきましょう。

◎ 食物アレルギーは0歳で発症することがもっとも多く、小学校入学までに9割が治る

◎ 食物アレルギーの原因となりやすい食材は、回避せず適切なタイミングで少量ずつ与える

◎ 自己判断で離乳食の開始や特定原材料を与える時期を遅らせない

◎ 重篤な症状(呼吸困難、ぐったりする)が出た場合は、迷わずすぐに救急車を呼ぶ

◎ 食物アレルギーになってしまった場合は、不足しがちな栄養素を補う工夫をする


食物アレルギーは、医師の指導の下できちんと管理していけば、ほとんどが治るものです。

正しい知識を持って準備することで、大切な我が子を守り、食の喜びを一緒に楽しんでいきましょう。

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