米油とは、白米から作られているのではなく、米ぬかを原料として作られた食用油です。
「米油が体にいいというけれど、どんな油なの?どう使えばいいの?」
「米油は体に悪いという話も聞いたけれど、それは本当?」
そんな疑問を抱いている人も多いことでしょう。
実は米油には、玄米には含まれていて白米に精米すると削られてしまうビタミンやミネラルなどの豊富な栄養が含まれているのです。
健康効果も高く、
- がんや生活習慣病を予防できる
- 悪玉コレステロールを減らして動脈硬化を予防できる
- 血管を強くして高血圧を改善、血液サラサラにする
- 抗酸化作用でアンチエイジング
- ホルモンバランスを整えて更年期障害を改善する
- 活性酸素を抑えて美肌にする
などが期待できます。
そこでこの記事では、まず、
- 米油とは?その原料・製法・栄養成分
- 米油の特徴、他の油との違い
- 適する料理・調理法
- 米油が健康によい6つの効果
について、くわしくわかりやすく解説します。
さらに、
- 米油が危険と言われる2つの理由
についても、誤解がないように説明していきます。
最後まで読めば、米油がどんな特徴を持っていて、どう使えばいいのかがよくわかるでしょう。
この記事が、あなたの食生活を健康でよりおいしくすることに役立つよう祈っています!
目次
1 米油とは?
まず最初に、「米油」とはどんな油なのか、原料や作り方、含まれる栄養成分などの基本的な知識から解き明かしていきましょう。
1-1 原料と製法
「米油」は、「こめあぶら」「こめゆ」「べいゆ」と呼ばれ、植物を原料とする油であるため、「植物油」の一種に分類されています。
「米の油」ですが、いわゆる白いお米の粒から作られるものではありません。
米油の原料となるのは、玄米を削って白米にする過程で出る「米ぬか」です。
実は米ぬかには、20%もの油分が含まれていて、それを絞って精製することで、米油が作られるのです。
その製法は大きく2つに分けられ、それぞれ簡単に説明すると以下のようになります。
1)圧搾抽出法
原料である米ぬかに圧力をかけて、油をしぼり出す製法です。
米ぬかに豊富に含まれるビタミンやミネラルなどの栄養素が損なわれにくく、安全性が高いというメリットがある一方で、製造の手間とコストが比較的かかってしまう方法でもあります。
2)溶剤抽出法
n-ヘキサン(ノルマルヘキサン)という溶剤を使って、油を抽出する製法です。
使用した溶剤は、油抽出後に蒸留することによって取り除かれます。
圧搾法と比較すると、効率よく抽出できるためコストを抑えられる反面、栄養素は損なわれる可能性があります。
米油と日本人との関わりは深く、江戸時代にはすでに利用されていたとも言われています。
1-2 栄養成分
米油の原料である米ぬかには、ビタミンやミネラルなど豊富な栄養素が含まれています。
精米する前の玄米の栄養素を100%とすると、白米に含まれるのはわずか5%程度で、残りの約95%は削り取られた米ぬかに詰まっていると言われるほどです。
その米ぬかを原料として作られる米油も、もちろん栄養豊富です。
中でも主な栄養成分を挙げてみましょう。
- ビタミンE:抗酸化作用に優れ、細胞内に過酸化脂質が作られるのを防ぐ
- リノール酸・α-リノレン酸:動脈硬化や血栓を防ぎ、悪玉コレステロールを減らす
- オレイン酸:オメガ9系の不飽和脂肪酸で、善玉コレステロールを減らさずに悪玉コレステロールだけを減らす
- γオリザノール:更年期障害による不安やうつの抑制、酸化防止、血中コレステロールを低下させる
- トコトリエノール:ビタミンEの約50倍の抗酸化作用を持ち、「スーパービタミンE」とも呼ばれる
- 植物ステロール:コレステロールの吸収を抑える
玄米のにおいや味が苦手な人でも、米ぬかの栄養素を含みながらクセのない味わいの米油なら気軽に摂ることができるでしょう。
参考
※ 厚生労働省 e-ヘルスネット
※ 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書
※ 日本食品科学工学会誌 2012年 59巻 7号「米糠含有成分の機能性とその向上」谷口 久次, 橋本 博之, 細田朝夫, 米谷 俊, 築野 卓夫, 安達 修二
※ 日本食品科学工学会誌 2016年 17巻 1号「トコトリエノールの高効率分離精製技術の開発」北川尚美, 廣森浩祐, 博吉汗 斯琴髙娃, 関根敬史, 天野義一, 高橋武彦, 木村俊之, 米本年邦
※ Oregon State University|Linus Pauling Institute 微量栄養素情報センター「植物ステロール」「ビタミンE」
2 米油の特徴
では、米油ならではの特徴とは何でしょうか?
他の油との違いや、どんな料理に適しているかなど、具体的に挙げていきましょう。
2-1 他の油との違い
米油には、他の植物油と比べて、特に違いが顕著なことがいくつかあります。
以下を見てください。
1)ビタミンEが多く、抗酸化作用に優れている
1章で挙げたように、米油にはさまざまな栄養成分が含まれますが、中でも特に特徴的なのがビタミンEの豊富さです。
他の主な植物油と比べて見ましょう。
<ビタミンE(α-トコフェロール)の含有量>
米ぬか油 | 大豆油 | なたね油 | 綿実油 | とうもろこし油 | ごま油 | オリーブ油 | |
ビタミンE (mg/100g) | 25.5 | 10.4 | 15.2 | 28.3 | 17.1 | 0.4 | 7.4 |
※出典:文部科学省「日本食品標準成分表」
綿実油とともに米油の数値が飛び抜けているのがわかりますよね。
ビタミンEの主な効能は、抗酸化作用です。
米油に強い抗酸化作用があることにより、
- 米油自体が酸化しにくい=品質が劣化しにくい
- 食べると細胞を活性酸素から守り、アンチエイジング効果が期待できる
といったメリットがあります。
2)植物ステロールが多く、コレステロールを下げる働きがある
植物ステロールは、機能や構造がコレステロールに似ている植物由来の化合物で、摂取すると腸内でコレステロールの吸収を抑える作用があります。
米油には、この植物ステロールも多く含まれていて、他の植物油と比較すると以下の表のようになります。
<植物ステロールの含有量>
米油 | コーン油 | キャノーラ油 | ごま油 | オリーブ油 | |
植物ステロール (mg/大さじ1=14g) | 162 | 117 | 92 | 102 | 22 |
※出典:Oregon State University|Linus Pauling Institute 微量栄養素情報センター「 植物ステロール」
コレステロール値が高くなると、動脈硬化や脳梗塞につながると言われていますので、米油はその予防にも役立つと言えるでしょう。
3)米ぬかの特徴的な成分・γオリザノール
γ(ガンマ)オリザノールは、含まれる食品が少なく、米ぬかの特徴的な成分です。
コレステロールの吸収を抑えるとともに、自律神経に作用するため、更年期障害に効果があるため、医薬品としても用いられています。
4)においや味にクセがない
植物油の中には、ごま油やオリーブ油のように味や香りが特徴的なものもありますが、米油はほぼ無味無臭に近い油です。
そのため、料理に使っても素材の味をじゃましません。
そのままドレッシングにしたり、揚げ物や炒め物に使ったりと、幅広く使用できます。
5)値段はやや高め
いろいろとメリットのある米油ですが、最大のデメリットは価格です。
玄米100kgを原料とした場合、とれる米油は1kg程度と非常に少ないので、ほかの植物油に比べると少々高価になってしまうのです。
特に圧搾抽出で作られたものは、100gあたり300〜1,000円程度のものもあります。
揚げ物などで大量に使いたい場合には、100gあたり数十円からという手頃な価格で手に入る溶剤抽出のものを選ぶといいでしょう。
これらを総合して考えると、米油は植物油の中でも健康効果が高く使いやすいと言えそうです。
参考
※ 厚生労働省 e-ヘルスネット
※ 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書
※ 日本食品科学工学会誌 2012年 59巻 7号「米糠含有成分の機能性とその向上」谷口 久次, 橋本 博之, 細田朝夫, 米谷 俊, 築野 卓夫, 安達 修二
※ Oregon State University|Linus Pauling Institute 微量栄養素情報センター「植物ステロール」「ビタミンE」
2-2 適する料理・調理法
前項でも触れたように、米油には味やにおいがほぼありません。
そのため、どんな調理法の料理にも気軽に使うことができます。
が、特性をより生かすなら、以下のような用途が最適です。
- ドレッシング:合わせる調味料の味をじゃませずに、野菜の味わいも引き立ちます。
- 天ぷらやフライ:油ぎれがよくカラッと揚がる上、揚げ色が濃くならないので見た目もきれいです。
- 白米の炊飯:お米を炊くとき、2合あたり小さじ半分〜1杯ほどの米油を入れると、ツヤと旨味がより際立ちます。
3 米油が健康によい3つの効果
栄養豊富な米油には、さまざまな健康効果が期待できます。
この章ではその代表的なものを6つ挙げてみました。
3-1 抗酸化作用でがんや生活習慣病を予防できる
ビタミンE、トコトリエノール(スーパービタミンE)、γオリザノールの抗酸化作用で、細胞の老化を防ぎ、生活習慣病などの予防に役立ちます。
特にトコトリエノールには、がん細胞の増殖を抑制する作用があるとされています。
3-2 悪玉コレステロールを減らして動脈硬化を予防できる
植物油の中でも米油に特に多く含まれる植物ステロールが、コレステロールの吸収を抑えます。
また、米ぬか特有の成分・γオリザノールにも、コレステロールを抑える働きがあり、合わせて動脈硬化の予防が期待できるでしょう。
3-3 ホルモンバランスを整えて更年期障害を改善する
γオリザノールには、更年期障害や自律神経失調症などを改善する効果があります。
γオリザノールが含まれる食品は、米ぬかなどわずかしかないので、米油ならではの効果だと言えるでしょう。
参考
※ 厚生労働省 e-ヘルスネット
※ 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書
※ 日本食品科学工学会誌 2012年 59巻 7号「米糠含有成分の機能性とその向上」谷口 久次, 橋本 博之, 細田朝夫, 米谷 俊, 築野 卓夫, 安達 修二
※ 日本産科婦人科学会雑誌「更年期障害に対するγ-オリザノールの臨床効果 : 血清過酸化脂質に関して」石原 実 ,伊藤 祐正 ,中北 武男 ,前濱 俊之 ,稗田 茂雄 ,山本 幸次郎 ,上野 昇
※ Oregon State University|Linus Pauling Institute 微量栄養素情報センター「植物ステロール」「ビタミンE」
4 米油が危険と言われる2つの理由
これほど健康効果が期待できる米油ですが、一方で「体に悪い」「危険だ」という説もあります。
そこでこの章では、米油の危険性についてくわしく解説していきます。
4-1 有害なノルマルヘキサンが使われる場合がある
1章で説明したように、米油の製造法には「圧搾抽出」と「溶剤抽出」の2種類があります。
このうち溶剤抽出法では、n-ヘキサン(ノルマルヘキサン)という有機溶剤を使用します。
実はこのノルマルヘキサンには毒性があり、慢性中毒になると多発性神経炎を発症するリスクがあるのです。
そのため、「ノルマルヘキサンを使って作られた米油は危険」と主張する人が出てきたわけです。
が、一方でノルマルヘキサンは沸点が約69℃と低いため、加熱すればすぐに蒸発してしまいます。
各製造メーカーは、溶剤抽出法で米油を製造する過程では、高温で蒸留するためノルマルヘキサンは揮発してしまって製品中には残らないと発表しています。
それでも不安だという場合は、薬品などを使わず製造される圧搾抽出の米油を使用するとよいでしょう。
参考
※ 環境省「化学物質の環境リスク評価」第1巻
4-2 過去に「カネミ油症事件」という公害があった
1968年、福岡県の企業で作られた米油に有害物質のポリ塩化ビフェニルが混入し、知らずに油を口にした人々に健康被害が及んだ公害事件がありました。
「カネミ油症事件」と呼ばれ、その米油を食べた人たちは、皮膚に色素が沈着したり、頭痛、発熱、手足のしびれから、肝機能障害、心臓疾患などを引き起こすなど深刻な被害を受けたのです。
これにより、「米油=危険」というイメージを抱いてしまった人もいたようです。
が、本来ポリ塩化ビフェニルは米油に混入されるものではありません。
カネミ油症事件の場合は、油の脱臭のために配管の中を循環させていたポリ塩化ビフェニルが、配管ミスによって米油の中に混入し、それが加熱され毒性の強いダイオキシンに変化してしまったことが原因でした。
そのような事故がない限り、ポリ塩化ビフェニルもダイオキシンも、米油には混入されない物質だということを知っておきましょう。
4-3 現在の米油の安全性
現在では食用油については、農林水産省による「食用植物油脂の日本農林規格」で、油の種類ごとに原材料や成分、添加物などの基準が定められています。
また、検査機関である「日本油脂検査協会」も、油脂製品や油脂を扱う工場について定期検査を実施し、安全性を確認しています。
米油も厳しい基準と検査を経た上で、消費者のもとに届けられていると考えてよいでしょう。
5 こんな人には米油がオススメ!
これまで説明してきたように、さまざまな効果が期待できる米油は、以下のような人にオススメの油だと言えそうです。
- 玄米のにおいや味は苦手だけれど、白米にはなく玄米にだけ含まれる豊富な栄養素を摂りたい
- 揚げ物が好きだけれど、コレステロールなどのリスクが心配
- 高血圧や生活習慣病の危険があるので、油モノは控えている
- 更年期障害に悩んでいる
「自分に当てはまる!」と思ったら、普段使っている食用油を米油にかえてみましょう。
まとめ
いかがでしょうか?
米油の性質や特徴、健康効果などについて、よく理解していただけたかと思います。
最後にもう一度、記事の内容を振り返ってみましょう。
◾️米油とは、米ぬかから作られた栄養豊富な油
◾️米油の健康効果は、
- がんや生活習慣病を予防できる
- 悪玉コレステロールを減らして動脈硬化を予防できる
- 更年期障害を改善する
この記事の内容を踏まえて、あなたが米油を適切においしく使えることを願っています。
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