毎日の料理に使っている、菜種油。ふと本屋の前を通ると「菜種油は危険!」という見出しが目に留まりました。
「毎日使っている油だから、危険だったらどうしよう!」
「本当に危険なの?」
と、不安な気持ちを抱えていないでしょうか?
菜種油が危険だと言われるのには、5つの危険要素があります。
とくに、菜種の種子に含まれている「エルカ酸」や「グルコシノレート」は長期間摂取することで、心機能障害や甲状腺障害が引き起こす可能性が。
だからこそ、菜種油にはどのような危険性があるのか正しく把握することで、これからも菜種油を使うのかどうかジャッジできるようになります。
この記事では、
- 菜種油が危険だと言われる5つの理由
- 菜種油の中でも安全性が高いのは?
- 菜種油以外のおすすめの植物油
という、3つのポイントに分けてご紹介します。
これを読み菜種油の危険性を知れば、どのような食用油を選ぶべきかしっかりと検討したくなるはずです。
目次
1.菜種油が危険だと言われる5つの理由
菜種油が危険だと言われる理由は、主に5つあります。
【原材料による危険性】
・エルカ酸が心機能障害を引き起こす可能性がある
・グルコシノレートが甲状腺障害を起こす危険性がある
・遺伝子組み換え種子への不安
【製造過程での危険性】
・精製過程でアルツハイマーへの関与が示唆されている物質が増える可能性がある
・精製過程でトランス脂肪酸が発生する可能性がある
一つずつ論文などを交えながら、詳しくご紹介します。
1-1.菜種油の原材料による危険性
菜種油とは、アブラナまたは同属の種子から搾取した食用油を指します。原材料となる種子に健康リスクが高い成分が含まれていることが、菜種油が危険だと言われる理由の一つです。
具体的には、どのよう危険性があるのか詳しく説明します。
1-1-1.心機能障害を引き起こす可能性がある
菜種の種子には、不飽和脂肪酸の一つである「エルカ酸(エルシン酸とも呼ぶ)」が豊富に含まれています。実は、この「エルカ酸」は健康を害する恐れがある脂肪酸の一つなのです。
「食用油脂構成脂肪酸の毒性」には、菜種油を長期間摂取したラットがエルカ酸の毒性により心臓が壊死、もしくは線維症を引き起こしたと記載されており毒性の高さが伺えます。
内閣府が公表している2016年11月の「欧州食品安全機関(EFSA)、食品中及び飼料中のエルカ酸に関する科学的意見書」でも、エルカ酸を長期的に摂取したときの臨界影響として、心臓を構成する筋肉「心筋」が脂質代謝障害を引き起こすと特定したと記載されています。
菜種の種子によっては総脂肪酸の60%以上をエルカ酸が占めているため、長期使用での安全性が危惧されています。
1-1-2.甲状腺障害を起こす危険性がある
菜種の種子には、苦味や辛さの基となる含硫化合物「グルコシノレート」が含まれています。グルコシノレートは調理方法や咀嚼により分解され他の化合物を生成するのですが、そのうちの「ゴイトリン」に甲状腺機能障害を引き起こす危険があると言われています。
内閣府が公表している2008年の「欧州食品安全機関(EFSA)、飼料中のグルコシノレートに関する科学パネルの意見書」でも、グルコシノレート由来物質は哺乳類に影響を与え甲状腺機能低下や甲状腺肥大を招くと記載されています。
同資料ではグルコシノレートの危険性を考慮し、単胃動物への飼料としては1日の含有量を1~1.5mmol/kg程度に制限することを提言。現段階で人間の定量は明確にされていませんが、いかに摂取方法を考慮しなければならないかが分かるでしょう。
1-1-3.遺伝子組み換え種子への不安
遺伝子組み換え農作物とは、農作物が本来持っていない遺伝子を取り入れる技術です。例えば、冬に弱い種子に冬でも枯れないような遺伝子を取り入れれば、年間を通じての栽培が可能となりより効率よく生産できるようになります。
現在日本では、農林水産省の認可を得た遺伝子組み換え農作物の輸入や栽培実験、加工販売が許可されています。農林水産省が公表している「遺伝子組換え農作物の現状について」によると、2013年の段階で遺伝子組み換えのセイヨウナタネを使った食品販売を18種類許可しており、主な用途は食用油です。
また、日本に輸入される菜種の種子はカナダ産が90%ものシェアを占めており、カナダでの遺伝子組み換え菜種の栽培率は98%とのデータも出ています。
それだけでなく、日本でも除草剤への耐性がある遺伝子組み換え種子を使った栽培がスタートしており、遺伝子組み換えでない菜種油を探すほうが困難な状態です。
遺伝子組み換え農作物を認可するときには厚生労働省が定めた安全性評価基準に従いアレルギー反応や安全性をチェックをしていますが、全ての農作物に対して長期的な使用を視野に入れた試験ができているわけではありません。
そのため、まだまだ不透明な部分が多く安全性を不安視する声が上がっています。
1-2.製造過程での危険性
菜種の種子から油を抽出し菜種油に仕上げるには、不純物や臭い、色を取り除き、冷えても凝固しにくい状態にするなどさまざまな精製過程を行います。
どのような過程を取り入れるかは抽出方法により異なりますが、製造過程にも菜種油が危険だと言われる理由が潜んでいます。
1-2-1.アルツハイマー病への関与が示唆されている
リノール酸が含まれている菜種油や菜種サラダ油を180℃以上で加熱すると、脂質過酸化産物の一つ「ヒドロキシノネナール」が急激に増加してしまうと言われています。
菜種油を始め植物油を製造するときに高温加熱をし脱臭処理をするため、ヒドロキシノネナールが発生する可能性があるのです。
ヒドロキシノネナールの健康リスクについては「マウス海馬由来HT22細胞において4-ヒドロキシノネナールと過酸化水素は異なる機構で細胞死を誘発する」という論文にも記載されているとおり、アルツハイマー病や神経変性疾患への関与が指摘されています。
1-2-2.トランス脂肪酸の摂取で心疾患のリスクが高くなる可能性がある
トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸の一種です。菜種油だけでなく植物油を高温処理する過程で、シス型の不飽和脂肪酸がトランス型へと変化し発生することがあります。
食品安全委員会の「ファクトシート」によると、トランス脂肪酸の過剰摂取で心疾患のリスクが高くなることや悪玉コレステロールを増加させる可能性があると警告しています。
現段階では油を加熱することでどの程度のトランス脂肪酸が生成されるのか分かっておらず、明確な対処法が見出せない状態です。
2.安全だと言われているのは「キャノーラ油」
今まで説明してきた危険性から、「菜種油は体に悪い」「菜種油は健康を害する」というイメージが定着しつつありました。
そこで誕生したのが「キャノーラ油」です。カナダで品種改良して作られた「キャノーラ」と呼ばれる菜種の種子を原材料としており、エルカ酸とグルコシノレートの量を減らし健康に配慮した油となっています。
キャノーラ油の誕生を皮切りに、国内でも「キラリボシ」のような無エルカ酸、低グルコシノレートの菜種油が製造されるようになってきました。
しかし、遺伝子組み換え種子であることや製造過程での課題をクリアし切れていないことから、絶対に安全だとは言い難いでしょう。
3.安全性を重視したいなら「米油」がおすすめ
家庭で使う食用油こそ「安全性を重視して選びたい!」という方は、「米油」を選択してみましょう。
米油は米ぬかを原料としており国産原材料を使用していることがほとんどなので、原材料に対する不安を払拭できます。
また、ビタミンEや植物由来のコレステロールが豊富で、健康に配慮して使えるところも大きな魅力の一つ。
どのような特徴があるのか詳しく知りたい方は、ぜひ下記記事もチェックしてみてください。
米油とはどんな油?特徴、料理での使い方、健康への影響まで徹底解説
4.まとめ
いかがでしたか?
菜種油にはどのような危険性があり、安全性が高い食用油を選ぶ重要性が分かってもらえたかと思います。
では最後にもう一度、記事の概略をまとめてみましょう。
■菜種油が危険だと言われる理由は次の5つ
■原材料による危険性
1)種子に含まれている「エルカ酸」を長期間摂取することで、心機能障害を引き起こす可能性がある。
2)種子に含まれている含硫化合物「グルコシノレート」によって生成されるゴイトリンは、甲状腺機能障害を引き起こす危険性がある。
3)菜種の種子は遺伝子組み換えが多く、安全性が危惧されている。
→エルカ酸やグルコシノレートの量を抑えた「キャノーラ種」が誕生
■製造過程での危険性
1)加熱処理をする過程で「ヒドロキシノネナール」が発生する可能性がある。ヒドロキシノネナールは、アルツハイマー病への関与が示唆されている。
2)加熱処理をする過程で「トランス脂肪酸」が発生する可能性がある。トランス脂肪酸は、心疾患リスクを高めると言われている。
■安全性を重視するなら、米油など他の食用油を選ぶのもおすすめ
この知識をもとに、菜種油の危険性把握して、より安心して使える食用油を取捨選択できるようになることを願っています。
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